コロナ禍前のデータではありますが、シチズン時計の「独身ビジネスパーソンの休日時間」によると、働く独身者の余暇時間は平均8時間19分、8割が一人で過ごすことが多いという調査結果がでていました。
自分の生活を振り返ってみても、その通りと実感できる数値です。この余暇時間、たまに退屈になったり、遊び場所が見つからずに所在なくぶらついたり…なんて日もありませんか?
そんなときにおすすめしたいのが美術館。先月訪れた美術館がすてきでした。
カースティ・レイ:静けさの地平
会期:2022年3月12日(土)~ 6月26日(日)
会場:富山市ガラス美術館
チケット代:1,200円
オーストラリアの作家カースティ・レイは、故郷キャンベラ周辺の丘陵や自然公園を歩くことを通して、現代の暮らしの中で希薄になりがちな、「場所とつながる」という感覚を探求してきました。(中略)レイにとって、作品制作を通して場所にまつわる記憶に触れることは、自分の存在を包み込む風景との一体感のうちに、彼女自身の「居場所」を見つめ直そうとする試みであるともいえます。
富山市ガラス美術館ウェブサイトより


富山市ガラス美術館が入居するTOYAMAキラリは吹き抜けに明るさが満ちて、周囲の羽板がガラスのような鋭さを感じさせるのと裏腹に、やさしい肌触りの木材でおもしろい組み合わせ。
好きな展示
納屋のある風景

納屋のトタン壁に照りかえす夏の日差し、建物自体が平坦に見えるほどの暑さ。
この作品が見せる風景は、田舎で暮らす私にはおなじみで、なつかしさを感じます。日差しを受けて銀色に輝く壁も、子どものころから見ていた風景で親しみがわく。オーストラリアうまれのカースティ・レイの作品に、日本生まれの私が「子どものころの記憶」を呼び覚まされるのが新鮮。
カモノハシの池

カモノハシが姿を現すのを待つ池の風景を描いたガラス作品。水の表現すごい。この作品の前に立つと、なぜかカモノハシ(のような何か)が現れるのを期待してそわそわしてしまった。じっと目の前に集中して、まるで時間がとまったかのような楽しい瞬間。カースティ・レイのガラス作品を見ていると、見ている側の想い出や感覚が次々とよみがえる。同時に、リアルタイムでない「想い出」であることが、静けさを呼ぶ。
ブルー・チェア

外の仕事から家に帰ってきたときの爽やかさの表現。この辺りから、私は心の中で「わかる、わかるわー!」って喜びながら見るようになっていました。真夏日の多くなってきたいま(6月末)なら響く人も多いと思います。
私の家は古い木造住宅で、夏は外との気温差があります。夕方もまだ暑さが残る中を帰ってきて、家に入った時の涼しい風、冷たい水、一日が終わった安心感、いろんな感覚が湧き上がってきて、椅子の背にかけられた青い布はぴったりのイメージです。
収穫

収穫といえば金色!というのは共通したイメージなのかしら…家族が稲作をやっていたので、「そう、収穫の金色は美しいな…」とうっとり眺めました。外側から中央に向かって収束するラインも力強くて美しい。光を透かした穂波を彷彿とさせる美しさは、ガラスならではと思います。
特別講演で作者の言葉がきける!
アートを見るときはフムフム(知識)と眺めることが多いのですが、今回の企画展では終始感覚が前のめりでした。この美しさが私の住んでいる場所にもあり、想い出や感覚とつながっている、と感じるのは初めての体験で、やさしさ…といっていいものか、安心感のような感覚に包まれました。カースティ・レイのガラス作品はどれも静かに澄み切っていて、素晴らしく美しかった。
企画展の期間中にはカースティ・レイ氏記念講演会が開かれ、YouTubeでアーカイブ視聴ができます。
静けさと美しさということに対しての考えをきかれての答え(通訳)
例えば私たちがどこかへ行こうとしていると、どうしても気持ちはたどり着く先になってしまうと思うのですが、そこへたどり着くまでの道のりもとても重要だと思っています。ちょっと立ち止まって、例えば目を閉じて周りの環境に感じるもの、耳を澄ませて聞こえる音というものの中から見えてくるものがあると思います。
カースティ・レイ氏 記念講演会より 1:19:31ころから
このお話をきいて、日常の中でふと見つける美しさが誰の中にもあって、ガラス作品をみたときに、それぞれに思い起こされるのではないかと思いました。ちょうど私がいろいろな思い出と一緒に、作品を楽しんだように。
ひとりの時間は美術館に行こう
今回は富山県ガラス美術館の企画展をご紹介しました。
全国には1,064館の美術館がありますので、誰しも住んでいる県内にかならず美術館があります。余暇を過ごす予定がないときには、美術館で過ごすのも素敵な一日です。
美しいものは家に帰ってからも覚えていますから、作品を思い返しては自分の中を美しいもので満たすこともできます。それに、五感が刺激されるおもしろさや、思ってもみない感覚を見つける楽しさは、実際に作品の前で味わえると思います。
(月曜日を休館日としている美術館が多いので、月曜日のおでかけは開館日をチェック。片道2時間かけていった先が休館日のとき、たまらない気持ちになります)

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